宮本百合子
底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社
1981(昭和56)年5月30日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第2版第1刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
1953(昭和28)年1月発行
初出:「宮本百合子選集 第六巻」安芸書房
1948(昭和23)年12月発行
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
宮本百合子
この事実の上にこそ、民主的な文学のゆるがすことのできない歴史的必然のよりどころがある。久しい間、現代文学の課題となって来た「私小説」からの脱却、伝統的な主情性の克服の可能も、文学が人民のリアリスティックな発展の可能性とそのための多種多様な行為とともにあってはじめて見出されるのである、と。この場合、国際的なプロレタリア文学運動が、二十世紀の世界文学の一発展としてもたらした文学の社会性、階級性についての諸観点、および作品の芸術的実感と歴史に対する客観的認識力との微妙な生きた関係の探求などは、民主的な文学の精髄をなす。なぜなら民主的な芸術感覚はそのものにおいて、進歩的な人々の生活感覚全体が保守の精神に生きるもののそれとはまるでちがったものであるとおりに、旧い文学感情とはちがうのであるから。
歴史はその仮借なさで「伸子」を永年にわたって変化させ、前進させた。「二つの庭」「道標」及びこれからかきつづけられてゆくいくつかの続篇をとおして、「伸子」のうちに稚くひびいている主題は追求され展開されてゆくであろう。