あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)

宮本百合子

あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)書籍情報

底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社
   1981(昭和56)年5月30日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第2版第1刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
   1953(昭和28)年1月発行
初出:「宮本百合子選集 第六巻」安芸書房
   1948(昭和23)年12月発行
入力:柴田卓治
校正:磐余彦

あとがき(『宮本百合子選集』第六巻) 10

宮本百合子

 伸子一人の問題としてではなく、この四分の一世紀間に、日本の進歩的な精神が当面しなければならなかった多難な歴史の課題にふれながら。「伸子」と「二つの庭」との間に二十数年がけみされた事情の一つは、作者の成長のひまのかかったテムポである。もう一つは、日本には丁度二十二年間治安維持法というものがあったという事実による。

「伸子」は当時のすべての作家の作品がそうであったように、漢字が多くつかわれ、漢字にはふりがな(ルビ)をつけて印刷された。現代の読者にとってそれは不必要な重荷であるから、この選集に収録するにあたって、漢字をだいぶ仮名になおした。文章そのものはもとのままである。
   一九四八年九月
〔一九四八年十二月〕